ルネサンス様式の調度で統一されたダイニングの窓から見える広い庭の緑の芝生は、この家を温かく見守るような秋の陽射しに満ちている。
機を見るに敏な経営手腕で世界に冠たるグラード財団の最高幹部の一人にまでのぼりつめた若き経営者と、天才の呼び名を欲しいままにしている著名な遺伝学者。
その地位と経済力に見合った邸宅と、そこに住む美しく聡明な4人の子供たち。
愛情と信頼に満ち、誰からも羨望の目で見詰められる、絵に描いたように幸福な家庭の温かい朝のダイニング。

そこに、抑揚のない瞬の呟きが力無く響いた。
「氷河……どうしよう……」
「どうしよう――って、瞬……」
氷河に何が言えるだろう。
風人と花香は、防音を考慮した壁も最新のセキュリティシステムも無にする小宇宙を感じとってしまうのだ。
しかも、氷河と瞬は、小宇宙をより強く燃やす術は知っていたが、小宇宙を抑える方法など知りはしない。
つまりは、何をしてもバレるのである。
氷河と瞬の才能を受け継いだ、あの可愛らしい双子には。

美しく聡明な4人の子供たちの将来と、彼等と過ごすこれからの幸福な時間を思い、愛し合い信じ合う二人は、うららかな朝の光の中で、為す術もなく、ただ途方に暮れるばかりだった。






Fin.






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