「でも、考えてみれば不思議だよねぇ」

瞬は、見事に事態を収集してくれた氷河に、感謝と尊敬の入り混じった眼差しを向けながら尋ねた。

「僕、毎日、河田さんの作ってくれるケーキを最低5個は食べてるんだよ? 最近は闘いもないし、ジョギングもさぼり気味で、運動らしい運動もろくにしてないのに、なんで全然太らないんだろ……」

「おまえは、まだまだ成長期で、すっかり身体が出来あがっていないからな。身体を作るのにエネルギーを消費してるんだろう」
「そうかなぁ……。成長期の子供だって、太ってる子はいっぱいいるみたいだけど……」


不思議そうに首をかしげる瞬の唇を、氷河が自分の唇でふさぐ。
「そんなことはどうだっていいことだろう? 今は。な、瞬?」


時刻は午前3時をまわっている。
二人が氷河の部屋にこもってから、既に4時間。

幾度目かの氷河の抱擁に、瞬はしっかりと目を閉じた。
その方が、よりはっきりと、確かに、強く、氷河を感じることができるのである。
そして、時折こっそり目を開けて氷河の表情を窺うのが、瞬は好きだった。



いずれにしても。

これは強く深い愛情に起因する、世にも美しい愛の営みであって、運動などというものではない――。

そう認識している瞬は、どれほどケーキやパフェを食べまくっても自分が一向に太らない訳を、決して知ることはないだろう。





Fin.



【back】