「あの二人は、あれでもまだ足りんのか」


決して覗き趣味があるわけではないのだが、見たくないものも見えてしまい、聞きたくないことも聞こえてしまうのが、創造主の不幸である。
天帝は、神の御座所である天の宮で、創造主たる己れの不運を、瞬と氷河以上に嘆いていた。


実は、当の二人よりも天帝こそが、瞬と氷河の身の上を憂えていたのである。


「……昔は良かったぞ。年に一度の逢瀬でも、牽牛と織女は私の慈悲に感謝したものだ。それが、最近の若い者ときたら、毎晩会ってもいいから昼間だけは働けという命令にすら不満を言う。毎日毎晩あの調子では、いくら不老の天人といえど身体を壊してしまうだろうが……」



親の心、子知らず。


天の河を見下ろす天宮で、深く長く吐息する天帝の背中には、創造主の嘆きがべったりと貼り付いていた。





Fin.






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