「兄さんが悪いんだ!! みんな、兄さんのせいなんだからっ!!」 「何を言う。俺はおまえのためを思って……」 「そんなの、間違ってる! ほんとに兄さんが僕のこと思ってくれてるのなら、兄さんは僕を助けたりせずに、僕が立ち上がるのを信じて見守っていてくれるべきなんだっ!!!!」 城戸邸のラウンジに、瞬の大声が響いていた。 妙になまめかしい風の吹いている真夏の夜。 もっとも瞬たちのいる室内は空調設備がその役割を完璧に果たしていて、快適な気温・湿度が保たれていたが。 「どうしたんだ。兄弟喧嘩か、珍しいな」 「おまけに、瞬の方が一輝を怒鳴りつけてるじゃん。一輝の奴、たじたじだぜ」 ラウンジに入ってきた紫龍と星矢が、君子危うきに近寄らずとばかりに台風の目を避けて、兄弟の争いを呑気に見物している氷河に話しかける。 彼は窓際の長椅子にくつろぎきった姿勢で腰をおろしていた。 「瞬の言っていることの方が正しいからな」 コニャックの入ったグラスを手にした氷河は、妙に楽しそうな様子で、星矢たちにそう答えた。 |