「さあ、氷河。お喋りはもうやめて、眠って」

瞬が、なかなか眠りにつかない駄々っ子をあやすように、氷河の肩に手を置く。
「余計なことは考えないの。僕は、氷河が僕の恋人じゃなくても、兄弟でなくても、氷河を守ってあげるし、多分、喜んで守られもする。僕たちは――」


『仲間だからね』

瞬が実際にそう言葉にしたのかどうか、氷河にはわからなかった。
それは、声ではなく、瞬の心として、氷河の中に流れ込んできたのだ。


だが、氷河にはわかっていた。
おそらく、瞬は、それが“仲間”でなくても、同じように自らの手を差しのべるのだということが。

氷河はずっと、瞬の小宇宙にいつかどこかで触れたことがあると思っていた。
すべてを包み込むように強く暖かい空気。

それは、母親の無償の慈愛に酷似していた。
懐かしい、だが、確かに今ここに存在する力。





――ほどなく、氷河は、瞬の暖かく心地良い小宇宙に促されるように眠りに落ちていったのである。

瞬の傍らに、瞬の仲間として存在できる幸福に包まれて。






Fin.






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