シュン王子は祈りました。 兄王のために。 ヒョーガのために。 そして、自分自身のために。 『 神様、僕の身体と氷河の身体を元の二人に戻してください。 僕たちは、別々の人間だからこそ、互いを思いやりながら愛し合うことができるんです。 二人の心と身体が繋がれば誤解も秘密も嘘もなくなるけど、多分優しさや思いやりの気持ちも失われることになってしまうでしょう。 きっと、ずっとこのままでいたら、僕たちは二つの心を持って、いつもそのどちらかを偽って生きている惨めな一人の人間になってしまう。 僕は、そんな人間になりたくない。 僕はヒョーガをそんな人間にしたくない。 お願いです。神様。 僕とヒョーガにまだ生きる価値があるとお思いなら、僕とヒョーガを別々の人間に戻してください……! 』 思慮に欠けた愛の女神は、今度はうまくやってくれました。 神様というのは、願い事の最後の1センテンスしか聞いていないものなのかもしれません。 シュン王子の祈りが終わった時、シュン王子の横にはヒョーガがいました。 シュン王子の色指定のミスも修正されていました。 二人は互いの瞳の中に互いの姿を映し出し、そして、しっかりと抱きしめ合ったのです。 「ヒョーガ……!」 「シュンっっ !! 」 愛している人を抱きしめるということは、愛している人に抱きしめられるということは、本当に本当に素晴らしいことです。 二人はもう繋がっていないのに、別々の存在になってしまったのに、互いに触れ合ったところから優しさや愛情が染み込んでくるようでした。 いいえ、触れ合っていなくても、見詰め合っているだけでも、そっぽを向いていても。 二人のラブシーンにむっとしてそっぽを向いてるイッキ国王の愛情も、シュン王子にはちゃんと伝わっていましたから。 そうして、二人は、無事に、元通りの幸せな身分違いの恋人同士に戻ることができたのです。 シュン王子とヒョーガは、二人で相談して、これからは、繋がり合うのはとりあえず夜だけにすることに決めました。 シュン王子は、でも、その事件以後、ちょっとだけ大胆になったそうです。 Fin.
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