「氷河、ありがとう。15号ちゃんたちを引き取ってくれて」
「別に……。俺は、おまえと同じ顔のチビ共が廃棄処分になんかされるのが我慢ならなかっただけだ。あれが俺と同じ顔のチビ共だったら、放っておいたさ」

「……嘘ばっかり」

口ではそう言う氷河が、実は、一生懸命で可愛いものに滅茶苦茶弱いことを瞬はよく知っていた。 瞬は、ベッドに腰をおろした氷河を背中から抱きしめるようにして、その耳許に囁いたのである。
「その時は、僕が、氷河1号から15号を僕の命に代えても守ってあげる」
「…………」

氷河は、そんなものを作ろうとする酔狂な人間はこの世に存在しないだろうと思っていた。
思ってはいたのだが。
それとこれとは別の話である。
氷河は、瞬の言葉が嬉しかった。

「頼りにしてるぞ」
自分の胸にまわっていた瞬の手を取り、その指先に唇を押し当てて、氷河は瞬に告げた。そのまま瞬の腕をほどき、逆に自分の腕で瞬の身体を抱きしめる。

そうして二人はいつもの通り、互いの身体を絡ませ、もつれ合わせるようにしてベッドに倒れ込んでいった。

健気で可愛い小さなメイドロボも、今頃は仲間たちと共に健やかな眠りに就いているはずである。
幸せそうな15号の笑顔は、氷河と瞬をも幸せにしてくれた。
これからは、15号たちの幸せな笑顔を毎日見ていられるようになるだろう。

憂いも懸念もなくなった互いの心と身体とを、氷河と瞬は互いに与え合い始め、やがて二人はその行為に夢中になっていった。

そして、××もたけなわ、いよいよクライマックス! という時。


突然、氷河と瞬の寝室のドアが音もなく、しかし実に賑やかに開けられたのである。

氷河と瞬の寝室に、ぞろぞろと行列を作って入ってきたのは、15号に引率された1号から14号までのメイドロボたちだった。

彼等は、どうやら、氷瞬家における家事全般及び日常生活の決まり事に関して、15号からのレクチャーを受けているところらしかった。
深夜だというのに、仕事熱心なことである。
否、彼らにとってそれは、仕事というよりは恩返しの一端なのだろう。

ベッドの下で、15号は、絡み合っている氷河と瞬の姿を右手で示し、早速仲間たちに説明を始めた。
「いい? よく覚えておいてね。あれはご主人様たちが愛し合っているからすることで、氷河様が瞬様を食べようとしているんじゃないの。だから、もし、夜、瞬様の泣き声が聞こえてきても邪魔しちゃいけないんだよ」

仲間たち全員に聞こえるように声を張り上げている15号は、自分自身がご主人様たちの邪魔してることには全く気付いていないようだった。

そこに、これまた勉強熱心な1号が、質問を投げかけてくる。
「15号、それ、ほんとにほんと? 瞬様、なんだかすっごく苦しそうにしてるよ?」
「え……」
そう尋ねられてしまうと、15号も自信がなくなってくるのである。

15号は、たけなわだった××を中断させられて、疼く身体を持て余し気味の瞬に向かい、ベッドの下から声を張りあげた。
「で…でも、そこがいいんですよね、瞬様! 痛いくらい抱っこされるのが幸せなんですよね、瞬様!」

「……じゅ…15号ちゃん……」
熱心に真理の探究に挑む15号に真顔でそう尋ねられ、瞬は羞恥と戸惑いのせいで耳たぶまで真っ赤に染めてしまったのである。

そんな瞬をしっかりと自分の胸に抱き寄せて、氷河は固く固く決意したのだった。

明日、程よい木陰のできる庭の楡の木の下に、15号たち専用の完全防音設備付き超高級別宅を建ててやることを。



明日は、おそらく良い天気になるに違いなかった。






Fin.







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