それは、氷瞬家の客間のお掃除をしている小人たちの姿でした。

人差し指サイズの小人の妖精たちは、ペットボトルのフタをバケツにして、彼等にすれば広大無辺とも思える客間のテーブルをせっせせっせと水拭きしていました。

(この家に妖精がいるっていう噂は本当のことだったのね!)

驚きつつも、メイドロボたちの可愛らしい様子を、きゃわは食い入るように見詰め続けました。
こんな可愛らしいものが、この世に存在するなんて、きゃわは考えたこともなかったのです。

きゃわの怪しい視線に気付いた様子もなく、メイドロボたちはお掃除に夢中。
あんまり一生懸命だったせいか、一人のメイドロボがペットボトルのフタのバケツをひっくり返してしまいました。

(あああああ……)

窓の外から覗いていたきゃわは、すぐに側に行って手伝ってあげたいと思いましたが、そんなことができるはずもありません。
何もできずに覗きを続けているきゃわの目の前で、バケツをひっくり返したメイドロボ――9号でした――は、『失敗なんかで泣かないぞ』のダンスをして、またせっせせっせとお掃除を始めます。

その可愛らしいことといったら!
きゃわはもう我慢ができませんでした。
もともとは瞬のファンのきゃわでしたが、瞬に近寄ると氷河に何か恐ろしい報復をされそうで、きゃわは瞬に話しかけることもできませんでした。

でも、メイドロボなら!

(こんなにたくさんいるんだもの。一人くらい減ったって、あの金髪強面男は気付かないに決まってるわ!)

何かに心を奪われてしまった人間が、常識的な判断を下すことなどできるはずもありません。
きゃわは、氷瞬家の窓から室内に入り込み、突然の不法侵入者に驚いているメイドロボたちの目の前で、堂々と9号を誘拐してしまったのでした。






【next】