「僕……何となく、小人さんたちを起こすいい方法を思いついたんだけど……」 非常事態宣言にも関わらず、すかぴーお昼寝をしている氷の国星の小人たちの前で、悩み続けていたメイドロボたち。 10号が一つのアイデアを思いついたのは、メイドロボたちがメイドロボハウスにやってきてから20分も経った頃でした。 「なになになにっ !? 」× 14 このまま、氷の国星の小人たちを目覚めさせることができなかったら地球はどうなってしまうのかと、とても不安な気持ちになっていたメイドロボたちが、10号の言葉に色めきたちます。 「でも、それだと、氷の国星の小人さんたちに嘘をつくことになっちゃうんだよね……」 けれど、今が非常事態なだけに、10号の思いついた“いい方法”もかなりの非常手段だったのです。 「どんな嘘?」 「おめざのビスケットができたよって、耳元で言ってみるの」 「おめざはまだできてないよ?」 「うん、そうなんだよね……」 それはとても効果のありそうな鶴のセリフでしたが、10号は、むしろ、そんな方法を思いついてしまった自分を恥じているようでした。 「嘘はいけないよ。氷の国星の小人さんたちをがっかりさせることになるもん」 「それに、ロボットは嘘をつけないんだよね」 「でも、僕たち、高性能ロボだから、嘘つけるんだよね」 「だけど僕、だからこそ、僕たちは嘘なんかついちゃいけないんだと思うよ」 「でも、それは氷の国星の小人さんたちのためになる嘘かもしれないし、もしかしたら、地球のため、人類のために必要な嘘なのかもしれない……」 「アフリカでたくさんの人たちが、風邪ひいて鼻水たらしてるんだよね……」 「オーストラリアのコアラさん、寒そうに抱き合ってたよね……」 目的が正しければ、手段は少々人道から外れていても許されるものでしょうか。 こういう時には、誰かを騙しても構わないのでしょうか。 そんな難しいことを自分たちで決めるなんてことは、メイドロボたちには荷の重すぎることでした。 「だ…だからって、こんな礼儀正しい氷の国星の小人さんたちを騙すなんて……」 氷の国星の小人たち、1号〜5号、ぱちっ☆(←誉め言葉に反応) 「そうだよ。氷の国星の小人さんたちは、氷の国星の氷河さんのために、一生懸命いい子でいようとしてる立派な小人さんたちなのに」 同じく、6〜10号、ぱちっ☆(←誉め言葉に敏感) 「あんまり力もないのにお手伝いしようとしてくれて、とっても優しい小人さんたちなのに」 同じく、11〜15号、ぱちっ☆(←誉め言葉が大好き) 「それなのに、騙すなんてー !! 」× 15 あまりに難しい選択を迫られたメイドロボたちが、自分の採るべき道に迷い抜き、輪になってあんあん泣き出した時、 「ふぁ〜、よく寝た! おはよう。メイドロボさんたち」× 15 全力で挑んでいたお昼寝から目覚めた氷の国星の小人たちが、ベッドの上で背伸びをしながら、メイドロボたちにおめざの挨拶をしてきたのです。 「こ…氷の国星の小人さんたちー !! 」× 15 メイドロボたちの頬を濡らしていた苦悩の涙は、途端に歓喜の涙に変わりました。 「あーん、氷の国星の小人さんたちが起きてくれたよー!」 「よかったねー、嘘つかずに済んで」 「うんうん、ほんとによかったね〜」 互いの肩を抱き合って、メイドロボたちは、窮地からの脱出を喜び合いました。 「ふにゃ〜、いい目覚めだね。誉め言葉で起きるのって、ほんとにいい気分だね」 「僕、誉められるの大好き」 「僕たちが、いい子だってことだもんね」 「うん。氷河もいつも、優しく誉めて起こしてくれるよね」 「そうそう。『俺の可愛い いい子たち。いい子だから、起きなさい』だよね」 「氷河にそう言われると、すぐに起きちゃうよね、僕たち」 「僕たちって、ほんとにいい子― !! 」× 15 メイドロボたちの苦悩の時も知らず、氷の国星の小人たちは、爽快な目覚めにとっても満足しているようでした。 |