さあ、いよいよ、いきなり、ミステリーのクライマックス。
謎解きタイムがやってきました。

小人探偵たちは、探偵の役どころをしっかり把握しています。
その態度は、名探偵として、まずは申し分のないものでした。


「僕たちは名探偵だから、このキッチンに来た途端にすぐにピンときたよ」
「まず、たれたれ瞬ちゃんは、容疑者から外される」
「たれたれ瞬ちゃんが、あんなまずそうなケーキを作れるわけないんだからね」

「う…うん……」
それには、たれたれ瞬ちゃんも同意見でした。
それくらい、氷の国の氷河の失敗ケーキはひどい出来だったのです。


「もちろん、僕たちの氷河も除外。僕たちの氷河は被害者なんだから」

「いや、あの……その、実は……」
話が思いがけない方向に進んでいくのに、氷の国の氷河は少々焦り気味です。


「僕たちは探偵だから、当然犯人じゃない」
ものすごい理屈です。


「そしたら、残るのはたれたれ氷河さんだけじゃないか」
「他に登場人物がいないもんね」
これは、とても理に適っていますね。


「炊飯器のスイッチを入れ忘れたのだって、きっと名探偵の登場に慌てたからだよ!」
小人たちは、自分たちの推理に絶対の自信を持っていました。
たれたれ氷河さんの他の犯人なんて考えられなかったのです。

「僕たちのお城のキッチンをこんなにめちゃくちゃにするなんて、ひどい!」
「僕たちを騙すなんてひどい!」
「たれたれ瞬ちゃんだって、騙されてたんだ!」
「でも、それよりも何よりも !! 」

「僕たちの愛する氷河の清らかな心を傷付けた罪は、いちばん重いんだーっっっ !!!! 」

小人たちは、そう叫ぶや否や、15人が一丸となって、たれたれ氷河さんに飛びかかり、たれたれ氷河さんをぽかぽかぽかぽか殴り始めました。
その様子は、しがみついて遊んでるようにしか見えませんでしたが、小人たちは渾身の力を振り絞って、たれたれ氷河さんを殴り続けたのです。

「お…おまえたち、ち……違うんだ! やめないか!」
氷の国の氷河はおろおろしながら、小人たちの攻撃をやめさせようとしました。

「小人さんたち、やめて! それは誤解だよ!」
たれたれ瞬ちゃんも、必死に小人たちに訴えました。

けれど、小人たちに、2人の声は聞こえていなかったのです。
小人たちは、自分の怒りと哀しみとやりきれなさを、たれたれ氷河さんにぶつけていました。

「たれたれ氷河さんのばかー !! 」
「僕たち、たれたれ氷河さんのこと、僕たちの氷河の次に、たれたれ瞬ちゃんとたれたれ瞬ちゃんのケーキとおんなじくらい大好きだったのにーっっ !! 」
「どーして、こんなことしたのーっ !!」
「きっと、僕たちの氷河がカッコいいから嫉妬したんだ!」
それは絶対に違います。

「たれたれ瞬ちゃんまで騙してっっ !! 」
「こんなにカッコいいのに、ひどいー !! 」
それは関係ありません。

「あーん、あーん、あーん」× 15

小人たちは、たれたれ氷河さんをぽかぽか殴りつけながら、みんな泣いていました。
小人たちは悲しかったのです。
小人たちは、みんな、たれたれ氷河さんを大好きでしたから。


でも。

どんなに大好きでも、罪は罪。
いけないことはいけないことなのです……。