さて、ミスターまりっこショーの司会者に負けず劣らず興奮していた小人たちは、その興奮冷めやらぬまま、番組終了後のディスカッションを開始しました。

「はぁ〜〜。今回のもすごかったね!」
「感動したー!」
「ウェディングケーキがどんどん大きくなっていくのとか、どうなってるんだろうね」
「あああ〜。はんどぱわーがあれば、どんどんお菓子を大きくできるのに」
「キャンディーを雨のように降らせることもできるのに」
「お風呂のお湯を、ホットチョコレートに替えることも」
「食べても食べても減らないクリームブリュレを作る事もできるのに――!」

どうして、テレビ画面の向こうでなら起こる奇跡が、氷の国では起こらないのでしょう。
そう考えて、小人たちが意気消沈しかけた時、
「氷河がハンドパワーの芸を習得すればいいんだよ」
と言ったのは、もちろん、9号でした。
言われた氷の国の氷河が、非常に嫌な予感を覚えて、針仕事をしていた手をぴたっ☆ と止めます。

「えっ !? ち……ちょっと待て、おまえたち! あれは種や仕掛けが……」
氷の国の氷河のしどろもどろな声が、巨大ウェディングケーキを夢見る小人たちの耳や心に届くはずがありません。

「ひょ〜が〜、はんどぱわーを手に入れて〜」
「はんどぱわー は幸せのちからー」
「はんどぱわー は夢と希望のちからー」
「ひょ〜が〜、はんどぱわーだよー」

憑かれたような様子で、氷の国の氷河に迫る小人たち。
氷の国の氷河は、幽鬼にも似たその雰囲気にたじたじです。

針仕事以外に芸も能も甲斐性もなく、奇跡にも幸運にも縁のない氷の国の氷河は、ひたすら顔を引きつらせるばかりでした。






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