「おまえたち……。さ、帰ろう。俺が頑張って働いて、10メートルくらいあるケーキを、きっときっと買ってやるから」

ミスターまりっこの前で揃って項垂れてしまった小人たちに、氷の国の氷河は、優しく、そして力強く、言いました。

氷の国の氷河は、小人たちの言った、

『そうしたら、おやつの消費量が減るから、氷河が働く時間が少なくなるの』
『氷河が僕たちと遊んでくれる時間が増えるの』
『おやつもいっぱい、氷河ともいっぱい』

──あたりのセリフに感激して、とても気が大きくなっていました。
それで、つい、とんでもない口約束をしてしまったのです。

でも、氷の国の氷河の気持ちもわかりますよね。
小人たちの求めていたものは、おやつだけではなかったのですから。
小人たちは、氷の国の氷河との時間を欲しがってくれていたのですから。

「それほんと?」
「ああ。俺がおまえたちに嘘をついたことがあったか?」
「ないー!」× 15

「うん、じゃあ帰ろうか。ダイニングに、今日のおやつのイチゴジャムクッキーがあるから、それを思い浮かべて飛ぶんだぞ」
「はーい」× 15

今は、10メートルの巨大ケーキの代わりのイチゴジャムクッキー。
それでも、氷の国の氷河と小人たちは、ほんのりほわほわ幸せでした。

奇跡のハンドパワーを手に入れることができないのは、とっても残念でしたけれど、気が違ってしまいそうなくらいに強烈な幸せとは違う幸せも、この世にはあるのです。

もっとも、小人たちはともかく、氷の国の氷河の幸せ気分はあまり長続きしませんでした。
氷の国の氷河は、とっても大事なことを一つ忘れていたのです。






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