「まりっこが、はんどぱわーを注ぎ出したよ! 準備はいい?」
ステージの袖でショーの進行を見守っていた9号は、最初に舞台に立つことになる1号に確認を入れました。

「最初は、僕ひとりで飛ぶんだね」
「大丈夫?」
「うん。一足先に、ビスケットのとこに行って、みんなを待ってるよ!」
1号は、ちっちゃな手でVサインを作ると、仲間たちににっこり笑ってみせました。

「はい、では2枚のお皿に蓋をします。いきますよ、1・2・3」
ステージの中央では、まりっこのカウントアップが始まっています。

まりっこの『3!』のかけ声と同時に、輪になって踊る仲間たちの中央にいた1号の姿は、仲間たちの作る輪の中から忽然と消えていました。


そして、まさにその瞬間、どんぴしゃりのタイミングで、スタジオのまりっこが右のお皿の蓋をとります。

「おおおおおお〜〜っ !! 」× 観覧者の数

「はい。可愛らしい小人さんが、ビスケットを抱えて座っています」
「いったい、何が起こったと言うんでしょう !? 目の前で見ていましたが、まさに一瞬の出来事でした !! 」
お馴染みの司会者さんのお馴染みのセリフは、今日も冴えまくっています。


「うまくいったよ! 次は2号と3号だ」

「おっけー」
「いつでも行けるよ!」


「まだです……。見ていてください」
ステージのまりっこが、再び、1号の乗っているお皿に蓋をします。
そして、その蓋を開けてみると、今度は――。

「おおおおおおおおおお〜〜っっ !! 」× 観覧者の数

「小人さんが、3人になりました」
「いや〜、すごい! わたくし、側で見ておりますが、全然仕掛けがわかりません」
「ハンドパワーです。左のお皿の方も何かが起こってますよ」
まりっこは、さも当然という顔で、今度は、左のお皿の蓋をどんどん上に持ち上げていきます。

「あ、あ、ああああああああああ〜〜っっ !!!! これはすごい! すごい! いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、ろく、しち、はち、くぅ、じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうし、小人さんたちが全部で15人ですーーーーーーーっっ !!」
まりっこがポーカーフェイスでいる分、司会者さんの興奮は頂上知らず。
よくもここまで興奮できるものだと感心するほどです。

「小人さんたちは、お人形ではありませんよ。ちゃんとご挨拶もできます」
興奮しっぱなしの司会者さんを尻目に、まりっこが、小人たちを、スタジオ観覧者と未来の番組視聴者たちに紹介します。


さあ、ここからが、小人たちの腕と可愛らしさの見せどころ。
小人たちは、全開の笑顔でテレビカメラに向かい、それはそれは可愛らしくご挨拶をしました。

「皆さん、こんにちは! 僕たち、氷の国から来ました!」
「まりっこのはんどぱわーに呼ばれて、飛んできたの」
「まりっこのはんどぱわーはスゴいです!」
「ケーキもおいしかったです!」
「7号、それは内緒!」
「あ、ごめ〜ん」

テレビカメラを担いだお兄さんが、まるで料理番組で出来あがったお料理を映す時のように、小人たちの乗っているお皿に超接近。
けれど、小人たちは、テレビカメラになんか物怖じもしません。
ここが大事な勝負どころなのを、小人たちはしっかりばっちり心得ていました。

「僕たち、ケーキが大好きなの」
「だから、まりっこも大好きなの」
「皆さん、可愛い僕たちにケーキをプレゼントしてください! 僕たちはケーキが大好きだけど、お金がないから、おなかいっぱい食べられないんです!」
「さっき、おなかいっぱい食べたよ」
「しーっ、それも内緒!」

「送り先は、郵便番号KOR−INOKUNI、氷の国の氷瞬城です!」
「皆さん、よろしくね〜!!」× 15


小人たちの笑顔は完璧でした。
スタジオの観覧者はオールスタンディング。
収録スタジオは、地球も割れてしまいそうな拍手と歓声でいっぱいです。

ここまでは。
ここまでは、確かに、ショーの進行は完璧だったのです。






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