「氷河―っっ !! 」× 15

再び意識を失ってしまった氷の国の氷河に、小人たちが泣きながらとりすがったその時でした。
小人たちに最期の力を振り絞って笑顔を作り、また倒れてしまった氷の国の氷河のおなかから、突然ものすごい、ぐううぅぅぅーっっ★ という音が響いてきたのは。

即座に、氷の国の氷河の石化原因を悟った9号が、仲間たちに指示を飛ばします。
「み……みんなっ! 氷河はおなかが減ってるんだよ! 何でもいいから、食べ物を食べさせるんだ!」

「おおーっっ !! 」× 15

小人たちは、すぐに自分たちのすべきことを了解しました。
そして、
「でも、何を?」
――という、至極当然の(でもちょっと間の抜けた)質問を発しました。

9号が辺りをぐるりと見回して、今度はペルセウス特急便のおにーさんに的確な指示を出します。
「ペルセウス特急便のおにーさん、ケーキをここまで持ってきて!」
「あ? ああ」
「箱を開けて」
「おっけー」

「さあ、みんな、このケーキを氷河に食べさせるんだ!」

「おおーっっ !! 」× 15
自分たちのすべきことを、今度は具体的に了解した小人たちが、再び力強い鬨の声をあげます。
そして、小人たちは、その小さな手にケーキのクリームやスポンジをすくいとって、一生懸命氷の国の氷河の口に放り込み始めたのです。

けれど、なにしろ、小人さんたちの手はとても小さいので、スプーン一杯分のケーキを運ぶのに、15人が、ケーキと氷の国の氷河の間を5往復くらいしなければなりません。
なので、氷の国の氷河はなかなか生き返ることができないままでした。

見兼ねたペルセウス特急便のおにーさんが、カットされたチョコレートケーキを一個手にとって、氷の国の氷河の口にべしゃっ★ と突っ込みます。

途端に、氷の国の氷河は、
「あむあむ、ごっくん。はー、生き返った。この5日間、何も食べず、仮眠もとらずに、働き詰めだったからなぁ」
と、案外あっさり生き返ったのでした。

「氷河っ !! 」
「氷河が生き返ったよっ!」
「氷河が生き返った!」

「あーん、生き返ってよかったよぉー! あーん、あーん、あーん !! 」× 15
死の国から生還してきてくれた氷の国の氷河に群がって、小人たちは大泣きです。

小人たちにとっていちばん大切なものは、何のかんの言ったって、やっぱり氷の国の氷河でした。
大型トラックの荷台いっぱいのケーキも、へろへろの氷の国の氷河がいてくれるところで食べるからおいしいのです。

甘いケーキをもっと甘くするのは、ケーキに群がる小人たちを優しく見守ってくれている氷の国の氷河の眼差しです。
それがなかったら、ケーキの甘さも半減してしまうに違いありませんでした。






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