『わおおぉぉぉぉぉーん……』 『あおあおあおあおおあああああおあおあおぉぉぉーん……』 氷の国に、悲しい咆哮が響いていました。 それは、愛する小人たちを、よりにもよって合体している時に他の男にさらわれてしまった氷の国の氷河の嘆きの雄叫びでした。 そして、それは、すぐにでも合体瞬を追いかけて行きたいのに、ネルネルネルネ沼のヒドラのような100畳大タペストリーに捕まって、身動きもできない氷の国の氷河の救援信号でもあったのです。 けれども、氷の国に住んでいる人間は、もともと氷の国の氷河と小人たちだけ。 ご近所の人が氷の国の氷河の救援信号を聞いて、駆けつけてきてくれるはずもありません。 それがわかっていても、氷の国の氷河は叫ばずにいられませんでした。 今頃小人たちは――いいえ、合体瞬はどうしているのでしょう。 お隣りの国とはいえ、石の国は氷の国から数百キロも離れた、遠いところにある国です。 だいたい、トーキョーとオーサカくらいでしょうか。 新幹線なら2、3時間、飛行機なら1時間の距離ですが、新幹線も飛行機もない氷の国では、はるかかなたの遠い遠い国でした。 石の国のどこかに閉じ込められて、合体瞬は、勇者で特急便のおにーさんのアルゴルに、ひどいことをされているかもしれません。 いいえ、石の国に着く前に、トラックの中で、変なとこにお触りされたり、むにゃむにゃされたりしているかもしれないのです。 なのに、100畳大タペストリーに巻き込まれて身動きもできない氷の国の氷河は、どーすることもできないのです。 氷の国の氷河は、無力な自分自身と100畳大タペストリーへの怒りと悲しみでいっぱいでした。 |