「…………」 小人たちはともかく、自分までが“世界でいちばん哀しいオトコ”として有名になってしまっているという事実を知って、氷の国の氷河は愕然としました。 どうして、そんな極秘事項を、氷の国の氷河と一面識もないハネムーンツアー客が知っているのでしょう。 氷の国の氷河はこれまで、自分の哀しみは自分一人の胸に収め、決して他人には知られぬようにと努めてきたのです。 小人たちも可愛いけれど、合体瞬との幸せな日々をどうしても諦めきれていないこと。 一生懸命書いたのに一冊として売れない本の在庫を見るたびに、どれほど寂しい思いをしてきたか。そして、こんな思いを味わうのが小人たちでなくて良かったと、心底から思ったこと。 小人たちの無邪気が、どんなに自分を幸せにしてくれたか、辛い気持ちにさせられたか。 氷の国の氷河の“哀しみ”は、いつも“幸せ”と一緒にありました。 自分のいちばん身近にいる小人たちが、その“哀しみ”に気付いていないのですから、他の誰にも、それはバレていないのだと、氷の国の氷河は思っていたのです。 それなのに――! 氷瞬城の高い塔の窓から、うじゃうじゃと湧いて出て好き勝手なことをわめいている幸せな(幸せなだけの)新婚カップルを見おろしながら、 「俺だって幸せなんだぞ……」 氷の国の氷河は、哀しく小さく呟いたのでした。 頑張れ、氷の国の氷河! 負けるな、氷の国の氷河! 君が幸せにならずして、誰が幸せになれるのだ! 君の幸せを、全世界が願ってる。 だから、決して挫けるなー !!!! Fin.
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