氷の国の氷河の刺激的な生活が始まって3日目も経ったある日のことです。 氷の国の氷瞬城・大浴場で、小人たちは緊急臨時切実切迫会議を開催していました。 「氷河、最近おかしいよね」 「うん……」 小人たちは、甘いものがお預け状態になってしまったのと、最近の氷の国の氷河がやけにぴりぴり辛口なせいで、全員揃って憂い顔です。 「氷の国の氷河さんは、いつでも小人さんたちのことを思ってくれてるんだよ。みんな、元気出して! お風呂からあがったらアイスクリームケーキがあるから。ねっ」 たれたれ瞬ちゃんがそう言ってくれなかったら、自暴自棄になった小人たちはシャンプーの泡の海に身を投げてしまっていたかもしれませんでした。 「ほんと?」 「うん、ほんと。クーラーボックスに入れて持ってきたの。脱衣所なら、氷の国の氷河さんに見つからないから大丈夫だよ♪」 「わ〜い!」× 15 「よ〜し、早く洗っちゃお〜!」 「お〜 !! 」× 15 絶望の後には、必ず希望の光が訪れるものです。 絶望の後にもっと悪いことが起きるなんてことは、絶対にありません。 もっと悪いことが起きたのなら、その悪いことが起きる前は、実は絶望するほど最悪な状態じゃなかったことになりますからね。 小人たちの辞書には『絶望』も『最悪』もありませんでしたが、たれたれ瞬ちゃんの言葉(とアイスクリームケーキ)は、小人たちにとって、確かに希望の光で歓喜の輝きでした。 すっかり浮かれてしまった小人たちは、“アイスクリームの歌”を歌いながら、輪になって身体を洗いっこして、湯船の中でも大合唱♪ お風呂場は、百夜があけた夏の日のお陽さま100個分くらい、一気に明るくなりました。 そして、そして、お風呂あがりのおやつタイム! 踊りながら脱衣所に向かった小人さんたちは、3日ぶりの甘いものに、身も心もとろけてしまいそうです。 「おいしいね〜v」 「幸せ〜vvv」 「ふにゃぁ〜vvvvv」 すっかり猫にマタタビ状態で、アイスクリームケーキの甘さに酔った小人たちの中には、ぱんつを脱いでしまう小人も出るくらいでした。 しかも、至福のアイスクリームケーキを食べ終わって、しんみりしてしまったところで、 たれたれ瞬ちゃんからの嬉しい言葉。 「明日のお風呂の時は、プリンを持ってくるからね。だから辛くてもくじけちゃダメだよ」 今度甘いものを食べられるのはいつになるのかしら? なんてことを考えて、気落ちしかけていた小人たちは、たれたれ瞬ちゃんのその言葉に生きる希望を見い出す思いでした。 「は〜〜い !! 」× 15 大きな声で元気に良い子のお返事をして、その日の小人たちのお風呂タイムは明るく幕を閉じました。 小人たちは、その時には、まさかこの幸せな秘密が、氷の国の氷瞬城に暗い影を落とすことになるなんて考えてもいなかったのです。 |