1時間が過ぎました。 待てど暮らせど、氷の国の氷河は崖下から這い上がってきません。 心配になったたれたれ氷河さんは、自分が崖の下に下りてみることにしたのです。 けれど、たれたれ瞬ちゃんは、あるものを指し示しながら、 「わざわざ確かめに行かなくても、これを小人さんたちに見せれば、氷の国の氷河さんはすぐに戻ってくるよ」 と言って、崖下に下りようとしていたたれたれ氷河さんを引き止めました。 たれたれ氷河さんは、ちょっと訝りながらも、それが乗っている葉っぱごと、氷の国の氷河探索を始めていた小人たちのところに持っていきました。 黒いトゲトゲで全身を覆われたそれを見た小人たちは、 「きゃーっっっ !! 毛虫だーっっ !! 」 「あーん、恐いよぉー !! 」 「氷河―っっ、助けてーっっ !!!! 」 と、阿鼻叫喚の嵐です。 平和な野原に小人たちの悲鳴が響き渡ったその時でした! 崖の下からなにやら正体不明の怪しい人影が光速のスピードで飛びあがってきたのは。 それは、もちろん、言わずと知れた氷の国の氷河──土と埃と擦り傷・切り傷にまみれた、氷の国の氷河でした。 「おまえたちっっ! 大丈夫かっっ !! 」 「あーん、氷河ーっっ! 恐いよぉー !! 」× 15 小人たちは、わらわらわらと氷の国の氷河に這い登り、氷の国の氷河は毛虫の乗った葉っぱを高い木の上へ。 「ああ、よしよし。恐かったな。でも、もう大丈夫だぞ」 そして、氷の国の氷河は、氷の国の氷河の腕や髪や耳にまでしがみついている小人たちの頭を順々に撫でて、小人たちをあやしだしました。 その姿は、どこから何をどう見ても、小人たちのおとーさん以外の何物でもありません。 それは、はっきり言って、この加害授業の趣旨と正反対の方向に突っ走った光景ではありました。 しかし、それでも、いずれにせよ。 氷の国の氷河が、この加害授業第1限の課題をクリアしたことに変わりはありません。 小人たちの危機となれば、氷の国の氷河は、尋常では考えられないような力を発揮することができるのでした。 |