「あー……。これは何だ?」

氷の国の氷河は、オークションなんて、これが生まれて初めての経験でした。
どの商品をいくらで買いたいと言ってきた人たちの中から、いちばん高い値段をつけてくれた人に品物を送ればいいだけなのだと思っていました。

なのに、この質問の山はどういうことでしょう?
しかも、氷の国の氷河がぼへ〜★ と画面を眺めている間に、質問はどんどん増えていくのです。

「お買い物する時に、お品の確認をするのは当然でしょ。僕たち、キーボードは使えないから、代わりに氷河、答えてね。ここで誠意ある対応をするかどうかで、売れ行きも違ってくると思うから、丁寧にね!」
「か……代わりにって言ったって、俺は……」

氷の国の氷河は、針と糸を持たせたら、世界に並ぶ者とてない天才お裁縫師でしたが、パソコンのキーボードは、昨日初めて触ったばかり。
まだ、マウスをクリックすることしかできないのです。

それなのに、こんなにたくさんの質問に答えなければならないなんて、どうしたらいいのでしょう。
9号に、返答の入力を命じられた氷の国の氷河は真っ青になってしまいました。

でも、ここはやるしかありません。
小人たちが一生懸命作った付加価値つき鍵盤を、その努力を無駄にしないためにも!

まるで貧血状態の白クマみたいに真っ青になりながら、それでも、氷の国の氷河は覚束ない指先(人差し指のみ)で、かっちょんかっちょんとキーボードのキーを叩き始めたのでした。