季節は秋。 金色に染まった銀杏の葉っぱが、氷の国の大地を金色に染めていきます。 そんな銀杏の木の下で、何ともかぐわしいぎんなんの香りに包まれながら、小人たちの会議の様子を見守っている一人の男がいました。 「誰か通らないかなぁ」 「だ〜れも来ないねぇ」 「今年はあの人は来てくれないのかしら」 「ああ、あの親切で……」 「くさい人……」 「そうそう、あのくさい人」 「くさくてもいいから、来てほしいねぇ」 「ほんとだねぇ」 今年も、親切でくさい金色の英雄さんが来てくれるのかどうか、それは誰にもわかりません。 でも、諦めるということを知らない小人たちは、朝からずっと、勇気ある英雄の登場を辛抱強く待ち続けていました。 ところで、皆さんは、『待てば海路の日和あり』という言葉を知っていますか? 何事も焦らずにじっと待っていれば、やがて好機がめぐってくる──という意味です。 まして、小人さんたちは、運命の神様に愛されていますからね。 もちろん、今年も、彼は小人たちの許にやってきましたとも。 「もしもし、そこの可愛い小人さんたち。何かお困りですか?」 親切でくさい金色の英雄さんは、今年も、白い手拭いでほっかむりをして顔を隠し、水中メガネに首タオル、おまけに、ゴム手袋・ゴム長靴で完全装備をしていました。 ほっかむりの手拭いの隙間から、ちょっとだけ、金色の髪が覗いています。 「あっ、金色の英雄さん、こんにちは!」 「あのね、あのね、僕たち、あそこになってる栗が食べたいの」 「でも、木には登れないし」 「イガイガは怖いし」 「食べたくても食べられないの」 「なるほど。そういうことなら、私に任せてください。ちょいとつついて、実を落としてあげましょう」 「わ〜い、ありがとう、金色の英雄さん!」× 15 親切でくさい金色の英雄さんは、まるで始めからこの作業に挑む覚悟だったみたいに、ものすごい重装備でした。 ですから、小人たちには、親切でくさい金色の英雄さんが何者なのか、まるでわかりませんでした。 どこかで聞いたことがあるような声ですし、なんだかよく知っている人のような気もしたのですが、困っている(小)人を助けてくれる正義の味方の正体を暴くなんて失礼なことは、絶対にしちゃいけないことですよね。 |