夏の風物詩 III




今日も今日とて、氷の国を照らす太陽は、短い夏の間は精一杯頑張ろうとファイト一発、ぎんぎらぎんに燃え盛っています。

小人たちは、夏の間の氷の国議会は、プールで開催することに決めました。
国会審議終了後は、お城の氷河が行き倒れていたところ(=氷瞬城でいちばん涼しいところ)で、ハンモックに揺られ、氷の国の氷河が夕食ができたのを知らせに来るまで、猫さんたちとお昼寝です。

そんなふうにして、その日も長い夏の1日が暮れようとしていました。

ぎんぎらぎんのお陽様が夕陽になりかけた頃、9号が、
「ねえ、みんな。夏の風物詩って言ったら何だと思う?」
なーんてことを言い出さなかったら、その日も昨日までと同じように平和に終わっていたに違いなかったでしょう。


「うーん、かき氷?」
「シューアイス」
「ぷるぷるのゼリー」
「シャーベット」
「アイスクリーム」
「僕、ジェラートも好き」

「うん。それも必須アイテムだよね。でもイベント関係で思い浮かぶものってない?」

「すいか割り?」
「お祭り〜」
「ま……まさか、肝試し?」
「わーん、僕、幽霊とかダメ〜」

みんなが怖気づいたところで、13号の問題発言。
「僕、ちょっと霊感があるんだ〜」

「えっ、ほんと !? すごいね!」
「み……見えたりするの?」
怖くて嫌いでも、なぜか気になるのが、この手のこと。
怖いもの聞きたさで、小人たちは、それぞれのハンモックの上から13号に注目です。

「うん こないだ夜中にね……廊下に何か気配を感じたんだ……」
「それでそれで?」
「気になってちょっと見に行ったの」
「すごいや。13号って勇気あるんだね」
「それで何か見たの?」
「うん。廊下の突き当たりのところにね……」

「…………(ごっくん)」× 14

「何かが蠢いてたの。白っぽい服を着てて、ゆらゆらと……」
「こ……こわいよ〜」

「……で、何かぶつぶつ呟きながら、ふらふらどこかに行っちゃったの。それだけなんだけどね。いったい、あれは何だったんだろう……」

「それは確かめるしかないね」
13号の話は、暑気払いには肝試ししかないと思っていた9号には渡りに船の情報でした。

「え〜っっ、でも怖いよ〜!」
「大丈夫、僕ら15人が一緒なら、何だって怖くないよ!」
「いざとなったら氷河が助けに来てくれるよ」
「そ……そうだよね」

「では、採決をとるよ」

1号「僕、氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
2号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
3号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
4号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
5号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
6号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
7号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
8号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
10号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
11号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
12号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
13号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
14号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」
15号「僕も氷河が助けてくれるなら行ってもいい」

9号「で、僕も、氷河が助けてくれるなら行ってもいい……と。これは決まりだね」


かくして、氷の国議会では、その日、第1回氷瞬城肝試しツアーの開催が議決されたのです。