その時、

「ちがうもんっ !!!! 」

怪しい人影の正体がカレーパンになりかけた氷瞬城の夜の廊下に、13号の切ない声が響き渡りました。

「ほんとに……ほんとに、見たんだからあぁ〜 !! 」

カレーパンと幽霊を見間違えるほど、13号は目が悪くないつもりでした。
それに、何といっても、仲間に信じてもらえないなんてことが、13号は初体験。

「あっ、待って13号!」

引き止める仲間たちの声を振り切って、13号は、泣きながら、だ〜〜っ★ と、廊下の暗闇の向こうに走っていってしまったのです。

残された小人たちは、13号の後を追いかけようとしたのですが、暗かったのと、何より動転していたせいで、足をもつれさせてしまい、その場に、とてててててて〜っ★ とドミノのように重なってコケてしまいました。

「お……おまえたち、大丈夫かっ !? 」
「氷河っ! ぼけっとしてないで、13号を追いかけて!」
この場合は、コケた自分たちより、仲間の許からひとり離れてしまった13号の身の方が心配です。

「あ……ああ、わかった」
9号の厳命を受けて、あたあたと頷いた氷の国の氷河は、13号の姿を飲み込んでしまった闇の中に、自らも飛び込んでいきました。


もちろん、小人たちも、13号捜索を氷の国の氷河だけに任せておくつもりは毛頭ありませんでした。
「みんな、ケガはない?」
「大丈夫だよ」× 13

9号の号令一下、氷の国の小人たちは優秀な捜索隊に早変わりです。
「よし。では、整列! 幽霊探検ツアープランはただ今をもって中止、これより、作戦を、13号捜索に切り替える」
「了解!」× 13

「我々の任務は、一刻も早く13号を見付け保護すること。これは、他の何を置いても最優先事項とする」
「了解っ!」× 13

「では出発する。気を引き締めていこう!」
「おーっっ !! 」× 13


こうして、氷の国の氷瞬城の、歴史に残る(?)長い長い夜が始まったのです。