ところで、そんなある日のこと。


小人さん商店街の商品取引のお付き合いで、リスさんや小鳥さんとすっかり仲良くなってしまった9号を心配した1号が、心配そうな顔をして言い出しました。

「9号ったら、最近、やたらとリスさんや小鳥さんたちと仲がいいみたいだけど、これだけは忘れないでね。僕たちは、氷河のために生きてるんだからね。氷河と出会うために生まれてきたんだからね。氷河を幸せにするためだけに、僕たちは……」

突然の1号の言葉に、9号はちょっとびっくりしてしまいました。
「や…やだな、みんな、変な心配しないでよ。僕が世界でいちばん愛してるのは氷河だよ! そんなの決まってるじゃない。リスさんや小鳥さんは親切なただの友達で、ビジネスの相手。氷河とは全然違うの。僕は、氷河が死んじゃったりしたら、僕も生きてけないくらい、氷河のこと愛してるよ! どうして、そんなわかりきったこと、今更言ってくるの……」

びっくりしながらも、少し悲しそうな顔になった9号を見て、今度は他の14人が慌ててしまいました。
「ご、ごめんね、9号。だって、ほら、たまにいるじゃない。愛より仕事を選んじゃう…みたいな人。あんまり9号が仕事熱心だから、僕たち、心配になっちゃって……」

9号も、もちろん、仲間たちが自分のことを疑ったわけではなく、心配してくれただけなのだということはちゃんとわかっていました。
ですから、9号は、仲間たちを安心させるために、きっぱりと断言したのです。

「僕は、氷河と仕事のどっちかを選べって言われたら、一瞬だって迷わずに氷河を選ぶよ。僕は、生きていくのに何がいちばん大切なのかを選び間違えりしない。だって、僕は、いつも、みんなと一緒なんだから…!」

「9号……。そ…そうだよね、僕たちは一心同体なんだものね!」

9号の力強い言葉に、他の14人はほっと安心。
一様に表情の和んだ仲間たちを見て、9号は更に力強い口調で言ったのです。

「あたりまえじゃない! さ、だから、そんなくだらないこと気にするのはやめて、今日も頑張っていっぱい稼ごう !! 」


氷河への愛と商売繁盛にどんな関係があるのでしょう。
はっきり言って、それは無関係です。

けれど、9号は、自分の理論展開にいささかの矛盾も感じていませんでした。

「おーっっ !!!! 」 × 14

他の14人ももちろん、全然感じていませんでした。



まあ、そんなこともありまして、小人さん商店街はいよいよ大繁盛。
小人たちは、ますます商売熱心になっていったのです。






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