小人たちのために、夜なべ仕事を続ける氷の国の氷河。

けれど、それが、小人たちの間に不満を生むことになってしまったのです。
日中は商店街の仕事で多忙な小人たちは、夜しか氷の国の氷河と遊ぶことができません。
なのに、氷の国の氷河は毎晩毎晩ぱんつ作り。

小人たちが不満を募らせていったとしても、それは仕方のないことだったかもしれません。


「氷河、また、ぱんつ縫ってるの」
「うん、また縫ってるみたい」
「どーして、氷河ってあんなにぱんつを縫うのが好きなんだろう……」

もちろん、それは、氷の国の氷河が小人たちを愛しているからです。
ぱんつが小人たちにとってどんなに大切なものなのかを知っているからでした。

けれど、小人たちはそんなことはちっとも知らないのです。
新しいぱんつは、いつもそこに準備されているもの。
小人たちは、そんなふうに思っていたのでした。


不満顔の仲間たちに一石を投じたのは、商売熱心な9号でした。
「決まってるさ、売れるからだよ! 氷河は商売の楽しさに目覚めたんだ!」

「ぱ…ぱんつで?」
9号の言葉に、小人たちは目を白黒。

けれど、9号は、仲間たちの誰よりも、ぱんつの価値を知っていました。
「ぱんつを馬鹿にしちゃいけないよ! ぱんつがなかったら、おなか冷やすじゃない!」

「で……でも、買っていくのは、あのぱんつを穿けなさそーな、怪しいおねーさんたちばっかりだよ…?」
「そういえばそうだね。おねーさんたち、あのぱんつをいったい何に使ってるんだろう……」

思案顔の仲間たちに、9号は、これまた自信たっぷりに言いました。
「決まってるさ、変質者だよ!」

「変質者〜っっ !? 」 × 14

「そーさ、変質者だよ。でも、変質者だって、お金を払ってくれる限りはお客様だからね」
驚き呆れる仲間たちと違って、9号はいたってビジネスライクです。

「そ…そっか……。変質者だからって差別しちゃいけないんだね……」
「9号ったら、立派ー! 変質者も差別しないなんて」
「うん、すごい立派!」

小人たちは、変な性癖の持ち主も差別しようとしない9号の態度に感心してしまいました。

「商売人として当然の心構えだよ!」
9号は、そんな仲間たちに、またまたきっぱりと言いきります。

1号〜8号、10号〜15号は、毅然とした様子の9号に、ますます感心するのでした。






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