「あの〜。この子たちに向いた仕事はありませんでしょうか」

口入れ屋には、既に先客が何人か来ていました。
先客たちは、働き手を探しに来ている雇い主側の人間らしく、皆、立派な店の主か番頭さんといった風情で、ぱりっ☆ としたいい着物を着ています。

そんなふうな先客たちの間をぬって店の奥に入ると、岡っ引き氷河は口入れ屋の主人に恐る恐る尋ねてみました。

「はぁ?」

“この子たち”の姿が見えなかった口入れ屋の主人は、『おかしな男がやってきた』と言いたげな顔をして怪訝そうに首をかしげましたが、岡っ引き氷河はそんなことには気付きません。
岡っ引き氷河は、小人たちの健気な望みを叶えてやりたい気持ちと、小人たちが働くことを心配する気持ちでいっぱいで、それどころではなかったのです。

「そんなに高いお給金はいりませんから、なるべく安全で、健全で、力がいらなくて、就労時間も短くて済む仕事がいいんですが……」

それは、岡っ引き氷河としては当然の、そして妥当な条件だったのですが、そんな岡っ引き氷河の腰の低さに耐えられなかったらしい小さな影が、岡っ引き氷河の着物の袂から飛び出てきました。

「氷河ったら、なに弱気なこと言ってるのっ!」

もちろん、それは我らが9号ちゃんの雄姿です。

「あわわわわわわっ !? 」
突然座卓の上に出現した小さな動く物体に、口入れ屋の主人は腰を抜かしてしまいました。

「弱気と言ったって、おまえたちに危ないことはさせられないじゃないか」
「そんなこと言ってられる事態じゃないでしょ! 僕たちはなるべく早く、長屋の雨漏りを直さなきゃならないんだから!」

『それなら、俺が仕立て物の仕事を増やすから』と言いかけた岡っ引き氷河にくるりと背を向けて、9号は店の主人に向き直りました。
そして、店内に、めちゃくちゃ威勢のいい大声を響かせたのです。

「口入れ屋のおじさんっ!」

「おおおおおおおっ !! 」
小さな人形が口をきくのに、口入れ屋の主人はまたまたびっくり。

「うんと高給で、お昼寝・おやつ付きのお仕事を、僕たちに紹介してちょうだい! 仕事はどんなに辛くても頑張るから!」

「なななななななんと、これはっ !! 」

驚きのあまり目を大きく見開いた口入れ屋の主人の前に、ぴょんぴょんぴょーん☆ と、他の小人たちも降り立ちます。

「そんな、おまえたちに辛い仕事なんて……」
「よろしくお願いしまーす !! 」× 15
「一寸法師の団体だーっっっ !!!! 」

口入れ屋の主人の胴間声に、店内にいた雇い主候補たちの視線が一斉に小人たちに集中しました。







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