「僕、こういうのって、前からやってみたかったんだぁ♪」 「……13号ってほんと、冒険好きだねぇ」 「イルカさーん、ジャンプして、ジャンプー!」 「13号ー! あんまり遠くに行っちゃだめだよー!」 「はーい」 広い大海原に投げ出されて救助の来る当てもないというのに、小人たちは全然暗くなっていませんでした。 冒険好きの13号なんか、イルカの背に乗って大はしゃぎ。 小人たちの辞書には、『絶望』という単語も載っていないのです。 「冒険好きというより、ただイルカさんと海のトリトンごっこをしたいみたいだけどね、13号は。それより、ここから一番近い陸地までどれくらいの距離なのかが問題だよね」 仲間たちの命を預かっているという自負のある9号は、さすがに13号ほど浮かれてはいませんでしたが、彼もあくまで前向きです。 「おい、お得意の物理学で、我々のいる位置の把握はできないのか?」 ミロ医学者は、どうやらクラゲに好かれてしまったらしく、クラゲの触手にまとわりつかれています。 「分野外だ。それは天文学者か海洋学になるだろう。そっちこそ、この軟体動物をなんとかできないのか」 一方、カミュ物理学者はタコに気に入られてしまったらしく、頭の上に大きなタコを一匹乗せていました。 「それこそ、生物学者のテリトリーだ」 「はぁ……。思えば遠くへきたものだな」 「まったくだ……」 学問の限界を感じる学者ふたりは、もはや大海原に身を委ねるしかありません。 空はどこまでもひたすら青く、海はどこまでもひたすら広く。 彼等の周囲にあるものは、俗世のしがらみを綺麗さっぱり忘れてしまえる大自然――まさに、大自然――ではありました。 |