「ようこそ、我が海底神殿へ! 私がこの神殿の主、海王ポセイドンのジュリアン・ソロです。ジュリーって呼んでね!」
海底神殿で、小人たち一向を出迎えたのは、なんだかとってもバタくさい感じのする若い男の人でした。

「乙姫様じゃないね」
「何だって、いいよ。僕たちにご馳走してくれるんなら」
「カラスミー」
「ちゃんぽんー」
「かすていらは別腹〜」
ここまで来ても初心を忘れない小人たちは、本当に立派です。

クラゲに好かれたミロ医学者の、
「ここは海の底だと思うが、どうして我々は息ができてるんだ?」
という疑問も、

タコに好かれたカミュ物理学者の、
「海の底なら水圧もかなりのもののはずだが、まるで陸にいる時と変わらないな」
という疑念も、

小人たちの、
「カラスミー」
「ちゃんぽんー」
「かすていらは別腹〜」
――という初心の前には、何の意味も力も持っていませんでした。

イカに好かれた銭形氷河は、もちろん、小人たちの希望最優先です。
「あの〜、ジュリーさん? 俺の小人たちは腹をすかせているんですが、もしよろしかったら、カラスミとちゃんぽんを食べさせてやってくださいませんか? お代は4文しかないんですが」

「私は海の世界一の金持ちです。久しぶりに来てくれたお客さんから、お金なんかは取りません。さー、皆のもの、もてなしてやれ!」
海底神殿の主ポセイドン・ジュリーは、なんだかとっても太っ腹でした。

「おっ、ジュリーは、東洋の神秘・小人姫を見ても驚かないな」
「タツノオトシゴか何かだと思ってるんじゃないのか?」
「それなら、そのまま誤解していてくれた方がいいな。へたに小人たちの可愛いことに気付かれると、またライバルが増えることになりそうだ。奴は、いかにも軟派な顔をしている」
「おまえ、まだ、そんなこと言ってるのか……」

ミロ医学者も、なかなか初心(邪心)を忘れない男のようでしたが、残念ながら、カミュ物理学者は、そんな友人をあまり立派だとは思わなかったようでした。







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