「9号、何かいい考えがあるの?」
9号のおつむが活動を始めると、他の小人たちのおつむと口も回り始めます。

「今のこの状態を変えるには何か新しい要素が必要なんだよ。変わるためのきっかけがいるんだ」

「きっかけ?」
「追っかけなら、僕、知ってるよ」
「突っかけなら、僕も知ってる」
「引っかけなら、僕だって知ってるもん」
「ぶっかけだったら、僕もわかる」
「打ち掛け!」
「膝掛け!」
「腰掛け!」
「飲みかけ!」
「食べかけ!」
「あんかけ!」
「あんかけは、僕、大好物だよ」
「あんかけ、いいね〜。僕も大好き」
「あんこのたっぷりかかったお団子も……」
「いいね〜、お団子」
「あんこもいいけど、三色団子もいいよ!」
「月見団子も風流だよね〜」

「みんな! トリップしてる場合じゃないよ!」
小人たちが、懐かしいお団子の味を思い出してうっとりし始めたところに、9号の喝が入ります。
9号の胸中には、どうやら既に、この状況を変えるための算段があるようでした。

「さ〜、皆さん、ご注目! 取りいだしたる この玉手箱! これが新要素として、現状を打破するきっかけを与えてくれるに違いないよ!」
海底神殿に行く前と、帰ってきてから。
小人たち一行に加わった新要素は、それ一つだけでした。

けれど、9号が、すちゃっ☆ と、玉手箱を取り出すのを見て、カミュ物理学者とミロ医学者は大慌てです。
「お……おい、あれを開けるつもりだぞ」
「ま……待て、早まるなっ! え〜い、どこに足を絡めとる! このバカタコがっ!」

タコに絡まれたその一瞬が命取り。

「なんだか、どきどきするね」
「玉手箱なんて、そうそう手に入れられないもんね」
「うん、じゃあ開けるよ」
禁断の玉手箱は、9号の手で、実にあっさりと開けられてしまったのです。

途端に、お約束通り、辺りには白い煙がもうもうと立ち込め、煙が消えた後に現れたのは、しわしわの老人小人――ではなくて、
「はぁ〜い! 呼ばれて飛び出てぴんぽんぱ〜ん♪」
ぴちぴちギャルのマーメイド・テティスだったのです。

「は〜〜、窮屈だったぁ。なかなかお呼びがかからないんですもの。浦島の太郎さん以来だわ」

うろこぴちぴち、しっぽぴちぴち、まさしく真のぴちぴちギャル、マーメイド・テティスは、大海原を漂流する小人たち一行に、彼等の進むべき道を指し示してくれるのでしょうか?







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