えぴろーぐ




忘れてはいけません。

こちらは、阿蘭陀国の王宮です。
庭にはチューリップの花が咲き乱れ、遠くでは風車がくるくる回り、まさに、いかにも、やっぱり阿蘭陀―! な風景が広がっています。

その阿蘭陀国のお城の窓辺で頬杖をつき、夢見る瞳で、青いお空を眺めている王子様が一人いました。
「日本の、おとなしくて、控えめで、可愛いお姫様は、いつ私の許にきてくれるんだろう……」
もちろん、それは、阿蘭陀国の麗しのジークフリート王子様です。

ジークフリート王子の許には、今日も、家庭教師ミロ&カミュからの連絡はありません。
その頃、2人は、花のお江戸で、クラゲにタコ踊りをさせ、タコに墨で絵を描かせて、江戸っ子たちからやんややんやの大喝采を浴びていましたから、彼等からの連絡がないのも当然と言えば当然のこと。

そんなこととは露知らず、今日もジークフリート王子は、日本の、おとなしくて、控えめで、可愛いお姫様を夢見て、お空を眺めているのでした。


「いつまで、カシオス姫を待たせるておく気なのじゃ、ジークフリート! カシオス姫はそなたにぞっこんラブで(←死語)、がっしりした腰つきも一段とたくましさを増しているというのに、そなたはいったい何が不満なのじゃーっっ !! 」
ヒルダ女王は、今日も朝から、カシオス姫との結婚をジークフリート王子に迫っていましたが、ジークフリート王子は、どうしても、夢見ることをやめられずにいました。

「いいんです、ヒルダ女王様。俺は、ジークフリート王子様が俺の愛を受け入れてくれる日を、いつまででも待ちます……」
「おお、カシオス姫、なんと健気なその言葉。ジークーっっ! いー加減にせーよ、貴様―っっ !! 」
ヒルダ女王は、今日も女王の威厳全開です。
阿蘭陀国は、ヒルダ女王がいる限り安泰なのに違いありません。

「いつか、お姫様が……」
「俺のジークフリート様……」
「ジークーっっ、このすかぽんたんーっっ !! 」

夢見る王子様は夢を見続け、恋するお姫様は振り向いてくれない王子様に恋をし続け、威厳ある女王様は今日も貫禄いっぱいです。
阿蘭陀国は阿蘭陀国で、皆さん、自分の幸せ追求に余念がありません。







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