「天上の御方は何故、あんなちっぽけな天使ごときに自由意思を与えたのでしょう。いったいあの御方は何を考えているのやら」 兄を救うために悲愴な決意を胸に地上に向かうシュンの閃光を目で追いながら、死の堕天使サマエルは、堕天使たちを統べる地獄の王に尋ねるようにぼやいた。 「これは、それを確かめるための取引だ。そのうち、わかるだろう、あの御方の考えていることは。……まあ、気紛れな御方ではあるがな」 かつての大天使長、神の玉座の右に座ることを許されていた唯一人の熾天使――は、堕天する以前、己れの敬愛の全てを捧げていた天上界の主を思い、その眉根に苦渋を浮かべた。 |