「……傷付きやすくて恐いんだ」
――というのが、氷河が瞬を避けている唯一の、そして端的な理由だった。

他人の些細な言動ですぐに傷付く瞬が、氷河は恐かったのだ。

端的に過ぎる“答え”の意味するところができなかったらしい星矢に、『俺が下手なのがいけないんだが』と前置きして、氷河が、嫌々ながら具体例を一つあげる。



瞬がアンドロメダ島から、日本に帰国してきた日。
一輝が帰ってきていないことを知らされて不安に苛まれている瞬に、氷河は、
「一輝は死んだものと考えていた方がいい。その方が諦めもつくし、もし生きて帰ってきた時には、嬉しさも倍増しになるだろう?」
と告げた。

もちろん、意気消沈している瞬を慰め、力付けるために。

氷河は、そのつもりだったのだが――。


氷河のその言葉を聞いた途端、それまでかろうじて涙だけは堪えていた瞬が、堰を切ったように泣き出してしまった――のだ。





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