「よー、瞬、面白いもの拾ったんだってー」
「うん。ペットントンって言うの」

星矢は、瞬以上に呑気だった。


「ほう、愛嬌のある顔だな」
「うん。可愛いの」

紫龍は、冷静かつ客観的な感想を述べた。


「何を食べるの?」

グラード財団総帥は、新しい居候の食費を気にしていた。

「何でも食べるみたいだけど、甘いものが特に好きみたいです。それくらいかな、氷河と違うのは」

「へ?」(←星矢の声)
「なに?」(←紫龍の声)
「え?」(←沙織の声)


「あとは、氷河とおんなじなの」

「は?」(←星矢の声)
「ほう」(←紫龍の声)
「まあ」(←沙織の声)

頓狂な声をあげてから、三人は揃って氷河に視線を向けた。

向けられた視線の先で、氷河が不機嫌を極めつくした仏頂面をさらしている。

「あー、そういえば、目が二つあって」
「口が一つあって」
「脚までついてるわ」

星矢たちの随分な言い草を、氷河は根性で聞き流した。
際限なく繰り返されてきた闘いのせいで、星矢たちもまた瞬と同じように、一般人と異なる感性を培ってしまったのだと、氷河は無理に思い込もうとした――のだ。

「氷河とおんなじじゃん」
城戸邸の住人たちを代表して、星矢が結論を述べる。

「でしょう?」
瞬は、その結論にいたく満足したらしく、星矢たちにこっくり頷いてから、ペットントンの頭を撫でた。

「瞬ちゃん、もっと撫で撫でして」
「はいはい」

氷河から見れば図々しいことこの上ないペットントンの要求を、瞬は快く受け入れる。


「そっくりー !! 」
それを見て、星矢たちはげらげらげらと馬鹿笑い、である。

氷河は不愉快の極致だった。



いずれにしても、そんなふうに。
城戸邸の住人たちは、この地球外生物を――既に城戸邸に住み着いていた某混血男に似ているという理由で――あっさり受け入れてしまったのだった。






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