『僕のカッコいい一輝兄さんを、たれくま購入の行列に並ばせることなんてできないから、やっぱり氷河が代わりに行って』と瞬に言われて、仕方なく来たんだ――

200個限定発売の“2001年 師走直前小忙し たれくまヌイグルミ・背番号11”を手に入れるための行列に並んでいた一輝を虚言で謀り、俺は、行列から一輝を引き離した。


俺は、もちろん奴のためになることをしてやったと思っている。

たれくま購入の列から逃れられると知った時の、奴の安堵したような顔。
そして、俺は、それから2時間と30分、奴が周囲から浴びるはずだった白い視線を一身に浴びてやったんだから。


俺は、もちろん、後悔もしていない。

「氷河、ありがとう! 氷河、大好き! 世界中でいちばん好き!」

俺は、夢にまで見た瞬のその言葉をついに手に入れることができた。
手に入れたくて、手にいれたくて、だが、瞬がいつも言い渋っていた言葉。

その言葉さえ手に入れられれば、俺はそれ以上は何も望まない。
心底からそう思っていた俺に、まるで幸せに酔っているかのような瞬は、だが、それ以上のものまで俺にプレゼントしてくれた。


「今度はクリスマスに、“2001年 メリークリスマス たれくまヌイグルミ・背番号12”が発売になるんだよ♪」

「げ……」






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