人が香りを一度に嗅ぎわけられるのはせいぜい3、4種類のものである。 しかし、今日は既にバレンタインデー。目指す香りを見付けるために、悠長に幾度も店に通ってはいられない。 瞬は、氷河に似合った香りを探すために、2、3種類の香りを嗅いではいったん店外に出て、また店のカウンターに戻るという作業を、幾度も繰り返した。 『よほど大切な方へのプレゼントなんですね』 と微笑む店員にぺこぺこ頭を下げながら、瞬が最終的に選んだ香水。 それは、オリエンタルノートを基調にグリーン系とフローラル系の香りの混じった、少々風変わりなボトルの香水だった。 カルバン・クラインの、 |