やがて、しゅん王子は15歳の誕生日を迎えました。

15歳というのは、しゅん王子の国では一人前の大人として扱われるようになる大事な節目の歳。
ですから、しゅん王子の15歳の誕生日を祝うパーティは、特別に大きなお船の上で盛大に催されたのです。

大人になったしゅん王子に、でも、しゅん王子のお兄様などは、
「しゅん、誕生日おめでとう。これからも素直ないい子でいるんだぞ」
と、全くの子供扱いでしたが。
しゅん王子のお兄様は、しゅん王子のご両親がそうであるように――もしかしたら、それ以上に――目の中に入れても痛くないほど、しゅん王子を可愛がってくれていたのです。

なので、大人になったはずのしゅん王子は、優しいお兄様のその言葉に反発など感じもしないで、
「はい、お兄様」
と素直に頷いたのでした。


けれど、15歳の誕生日を海の上で祝うのは、人生の大海に自分の足で踏み出していく一人の大人を叱咤激励するため。
誰の人生も、いつでも凪ぎの時ばかりとは限りません。
たとえ、最高の幸福を約束されたしゅん王子でも。

しゅん王子の人生の最初の嵐は、王子の誕生パーティのさなかに訪れました。

それまで穏やかに晴れ渡っていた星空がにわかに掻き曇り、突然の嵐がパーティの催されていた船を襲ったのです。

たくさんの人たちから告げられる祝福の言葉に少し興奮気味だったしゅん王子は、その時ちょうど甲板に出て夜風に当たっていました。

しゅん王子は、しゅん王子の誕生日を祝うために来てくれていた大勢の人たちの目の前で、海に投げ出されてしまったのです。

王子を救いあげるためにすぐさま海に降ろされた小船も、誰かが乗り込む前に転覆してしまうような激しい風波。

しゅん王子は、甲板で弟の名を叫ぶお兄様の声を聞きながら、濃灰色の波に呑み込まれてしまったのでした。






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