話しかけたのは、俺の方だった。
とても尋常の人間とは思えなかったから、人嫌いの俺にもそんなことができたのだったかもしれない。
花に――特別に美しい、特別に清らかな、特別に儚い花に――言葉を捧げるような気持ちで。
雪笹の絨毯の向こうに、霞むように小さく見える建物を指差して、
「あのサナトリウムにいるの」
と、白い花は告げた。
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