3年ぶりの氷河王子の帰還に、北の国の王宮は沸き返りました。

苦労に苦労を重ねて、強くたくましくなった氷河王子。
しかも、氷河王子は、世にも可愛らしい花嫁を連れて故国に帰ってきたのです。

氷河王子の突然の出奔に呆れかえっていた北の国の王様は、息子が花嫁と共に分別を身につけて帰還したものと思い、立派に成長した我が子を満面の笑みをたたえて王宮に迎え入れました。

「よくやったぞ、氷河! 花嫁探しの旅に出るのなら、最初にそうと言ってくれれば、それなりの準備もしてやったものを、なぜ、言ってくれなかったのだ」
「父上へのそれまでの子供じみた反抗が恥ずかしく、とても言い出すことができなかったのです。父上のおっしゃる通り、人生には伴侶が必要なのだと悟りました。俺のこれまでの不孝の数々を、どうかお許しください」
「もちろん、許すとも! 実に可愛らしい姫君だ。でかしたぞ、氷河! ついにおまえは父を越えた!」
「いえ、俺など、父上に比べればまだまだです」

とか何とか、氷河王子は、父王を喜ばせる大嘘を、臆面もなくすらすら言ってのけました。
氷河王子は、瞬が男の子だなんて、本当のことを父王に言うつもりは毛頭ありませんでした。

瞬を捜し出すために苦労を重ね、世の中の仕組みと人の心の機微とを知って、氷河王子はとてもお利口になっていたのです。
氷河王子は、お固い書物などでは学ぶことのできない『嘘も方便』という得難い教訓を、瞬捜しの旅で体得していたのでした。

黙っていることで誰もが幸福になれるのなら、皆に真実を告げることは全くもって無意味です。
氷河王子は、その点、実に確かな成長を遂げていました。






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