「瞬、話がある」
苛立ちを腹の底に飼って、一輝は、庭にいる瞬を呼んだ。

瞬が微かに首をかしげたのは、一輝自身は隠したつもりでいる彼の不機嫌を、瞬が見てとったからだったろう。

瞬が兄のいるラウンジに行くために玄関の方へ駆け出す。
瞬が玄関にまわったのを確かめると、一輝はそのまま部屋の奥に戻った。


秋の庭からは見えなくなった瞬の兄のいた場所を、氷河が無言で凝視していた。






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