さて、ロシアのお友達は、翌日も朝から瞬ちゃんのクラスにいました。 瞬ちゃんの隣りの席の子を机ごと蹴飛ばして、ロシアのお友達は、瞬ちゃんの席のお隣りにマイ・デスク&マイ・チェアー持参です。 アルビオレ先生は今日もロシアのお友達のガンつけに負けてしまいました。 アルビオレ先生は、なにしろ争い事が嫌いなのです。 さて、楽しい給食の今日のメイン(?)は、豆乳デザート。 豆乳デザートというのは、コーヒー牛乳プリンを半分凍らせたような、ヘルシーなアイスデザートです。 どのあたりにどんなふうに豆乳が使われているのかは誰も知らないのですが、ちゅうりっぷ小学校の人気メニューでした。 もちろん、瞬ちゃんも、豆乳デザートが大好きです。 「わあ、豆乳デザートだ! 僕、これ大好きなの! おいしいんだよねv」 ロシアのお友達は今日も給食のグループを無視して、瞬ちゃんの机とマイ・デスクをがっちり合体させ、瞬ちゃんと向かい合わせ。 ですから、ロシアのお友達は、真正面から、可愛い瞬ちゃんの満面の笑みを見てしまったのです。 この笑顔を倍も明るくできるのだったら、この笑顔をもっとたくさん見るためにだったら、誰だってロシアのお友達と同じことをしたでしょう。 そう。 ロシアのお友達は、自分の分の豆乳デザートを無言で瞬ちゃんのトレイの上に置いたのです。 「え? 氷河、豆乳デザート嫌いなの? とってもおいしいのに」 「…………」 本当は、もちろん、ロシアのお友達も豆乳デザートは大好きだったのです(ロシアの学校の給食にも、当然豆乳デザートは出てきました)(と思ってください)。 無言で俯いてしまったロシアのお友達を見て、瞬ちゃんにはすぐにそのことがわかりました。 「氷河ったら……。いいんだよ、氷河も好きなんでしょう?」 瞬ちゃんはそう言って、ロシアのお友達がくれた豆乳デザートをロシアのお友達のトレイに戻しました。 けれど、ロシアのお友達はそれをまた瞬ちゃんのトレイに押し返してきたのです。 瞬ちゃんはちょっと困ってしまいましたが、すぐにとても素敵なアイデアを思いつきました。 「ね、じゃあ、氷河の分は、二人で半分こして食べようよ」 ロシアのお友達が無言でこくりと頷きます。 瞬ちゃんは、ほっと息をついて、豆乳デザートの容器を開けました。 そして、スプーンで豆乳デザートを一口分すくって、ロシアのお友達の口の前に運び、 「はい、あーんしてv」 「あ…あーん??」 思いがけない幸運に、ロシアのお友達はちょっと戸惑い気味です。 恋をしていると、ほんの些細なことがとっても大きな喜びに感じられたり、ちょっとしたすれ違いで悲劇の主人公気分になるものですよね。 「おいしい?」 微笑む瞬ちゃんにそう尋ねられたロシアのお友達は、こくこくこくこく、まるでエサをついばむニワトリのように何度も何度も頷きました。 ほんとは、あまりの幸運に、味なんか全然わかっていなかったんですけどね。 「そうだよねぇ、おいしいんだよねぇ」 こくこく頷くロシアのお友達ににっこり笑って、瞬ちゃんも、同じスプーンで豆乳デザートをぱくっ☆ それを見たロシアのお友達は、 「■☆△◆$%∞〜〜〜っっっ !!!!!!!!!! 」 ……嬉しさのあまり、泡を吹いて、その場に卒倒してしまいました。 ロシアのお友達は、とても豊かな感受性の持ち主なのです。 |