さて。 そろそろ逃げることのできないところにまでやってきました。 いよいよ、問題個所のけけけのけです。 「氷河、その毛は……!」 瞬ちゃんにその部分を凝視されて、ロシアのお友達はぎくりと全身を強張らせました。 「こ、これは……」 ロシアのお友達は、スネ毛や脇毛はともかく、ここまで抜かれてしまっては困ると思ったのです。 それはオトナの象徴、オトナの男の象徴です。 とてもとても大事なケなのです。 「こんなとこにまで……」 けれど、そんなケの重要さが瞬ちゃんにわかるはずもありません。 瞬ちゃんは、ロシアのお友達の病気が心配で涙ぐんでさえいるのです。 「ね、氷河、一度、お医者様に診てもらおう? このままじゃ、氷河がけむくじゃらのおばけになっちゃうよ……!」 「いや、これは……」 「氷河……もう、病院に行くしかないよ!」 「そういうわけには……」 「氷河……!」 ロシアのお友達の身を気遣う瞬ちゃんの瞳からは涙が溢れ出て、ぽろぽろきらめきながら零れ落ち始めました。 ロシアのお友達は大慌てです。 瞬ちゃんを泣かせるなんてことは、ロシアのお友達にとっては悪魔の所業、何があっても決して決してしてはいけないことでした。 「マ…マーマが、いい薬を持っていると言っていたから、大丈夫だ」 「ほんと……?」 涙に濡れた瞳で瞬ちゃんに見詰められたロシアのお友達は、不謹慎にもどきどき胸を高鳴らせながら、こっくり力強く頷きました。 「ならいいけど……」 マーマのことをとても信頼している瞬ちゃんは、その言葉に少し安心したらしく、涙を拭ってロシアのお友達に微笑みかけてくれました。 ほっと安堵の息をついたロシアのお友達。 けれど、果たしてマーマには、ロシアのお友達のそのケを守るための妙案があるのでしょうか――? |