1階に戻ってきたロシアのお友達と瞬ちゃんは、お風呂場の反対側にキッチンとダイニングがあるのに気づきました。

キッチンには小さなお皿が15人分食卓に並べられていて、今にも小人さんが出てきて食事を始めそうな雰囲気です。
棚には、チョコレートやクッキーやキャンディーやジャムや蜂蜜の入ったビンが、ずらりと並んでいました。

「このお皿、可愛いね。これにも1から15の数字が模様で入ってるね」
「うん」
「小人さんたちって甘いお菓子が大好きなんだって。僕とおんなじなんだ♪」
「うん」

ロシアのお友達は、瞬ちゃんにこくこく頷いた拍子に、キッチンの床にバナナの皮が落ちているのに気付きました。


「ねぇねぇ、氷河、見て。これ、きっと小人さんのエプロンだね」
「うん、あ…!」

そこにバナナの皮があると、受けを狙う必要も芸をする必要もないというのに、人はなぜそれを踏んづけてしまうのでしょう。

お約束通りにバナナの皮を踏んづけたロシアのお友達の身体は、つるるるる〜っ☆ とスライディングしながら、ダイニングのテーブルの下に飛び込んでいきました。

「氷河……大丈夫……?」

慌ててテーブルの下にしゃがみこみ、ロシアのお友達の様子を確かめようとした瞬ちゃんが、そこで見たもの。
それは、テーブルの組脚にぶら下がって鉄棒ごっこをして遊んでいる小人さんの彫刻を、虚ろな眼差しで見詰めているロシアのお友達の姿でした。


ロシアのお友達は、したたかにお尻は打ったものの、今回はリュックは死守していました。
なのに、テーブルの下から這い出そうとした時に、テーブルの出っ張りにリュックの紐を引っかけて、これまたお約束通りに、リュックの中のおやつをどばらっ★


でも。
6回目ともなると、おやつ回収も手馴れたものです。

いちごポッキーをかじりながら、ぱぱぱぱぱっ☆ と散らばったおやつを回収した2人は、今度こそ、お城の2階を目指して歩き出したのです。


「今度は階段には気をつけていこうね」
「うん」

2人の手は、しっかりと繋がれています。
ロシアのお友達の足取りがちょっとふらふらしているのが気になりますが、7つ目の彫刻目指して、ロシアのお友達と瞬ちゃんは、お城の2階に続く階段をのぼり始めたのでした。



キッチンの方で、ちらっと動いた影は──まさか
リリィちゃんではないと思いますが……。






【next】