お城の2階には、嬉し恥ずかし小人さんたちの寝室がありました。 あることになっていました。 瞬ちゃんは、小人さんたちの可愛らしいベッドが15個並んでいる図を見られるに違いないと期待して、パンフレットにある寝室に入っていったのですが、そこには普通サイズのベッドが1つででん★ とあるだけ。 「……小人さんたちのベッドはどこなのかな。小さくて見えないなんてことないよね」 「ない」 「え?」 「小人たちは、いつも、氷の国の氷河と一緒にこのベッドで寝るらしい」 ロシアのお友達は、寝室の壁に掛けられているプレートの説明を読んで──もとい、見て、言いました。 ロシアのお友達は漢字が苦手でしたから、説明文をちゃんと読むことはできなかったのです。 でも、『小人さんの森彫刻高原』にやってくる小さなお友達のために、説明用のプレートは可愛いイラストつきでした。 「わあ、可愛い! 小人さんたちって、氷の国の氷河さんの枕にずらっと並んで眠るんだね」 「うん」 よくよく寝室の中を見て見ると、ベッドの枕元に小さな棚があって、そこには小人さんたちのパジャマやナイトキャップが綺麗に並べられていました。 寝相の悪い子もいるのでしょうか。平打ちの指輪みたいな腹巻きもあります。 「ふふ。小人さんたち、こんなの着て寝るんだね。可愛いね」 「うん」 「このパジャマ、触ってもいいのかな。こんな細かい刺繍のあるパジャマ、どうやって作るんだろう。破いちゃったら、弁償もできないよね」 「うん」 小人さんたちの服を作れるのは氷の国の氷河だけ、氷の国の氷河を動かせるのは小人さんたちだけ、そして、小人さんたちを動かせるのはケーキだけなのだそうでした。 ロシアのお友達は、氷の国の氷河のベッドを見ながら、何やら考えこんでいました。 ロシアのお友達は、『氷の国の氷河は幸せなんだろうか?』と、とても哲学的なことを考えていたのです。 氷の国の氷河は、もう結構いい歳の男のようでした。 いくら可愛いからって、いい歳をした男が毎晩小人なんかと寝ているなんて、ちょっと情けない話です。 自分はいい歳になる前にちゃんと瞬ちゃんと……なーんて、ちょっとトキメくことを考えたのが、ロシアのお友達の敗因でした。 ベッドの脇に、小人さんたちが普通サイズのベッドに上るための、小さな、けれど頑丈な階段があるのに気付かなかったのです。 あんなに階段には注意していたのに、何ということでしょう。 ロシアのお友達は、小人さん用の階段に蹴つまづいて転びかけ、手近なものにつかまろうとしたものの、つかまったものがベッドカバーだったために、それは何の役にもたたず、ベッドの角にアゴを打ちつけ、そのまま床にでべべべべべっ★ 「氷河っ、大丈夫っ !? 」 慌てて氷河の側に駆け寄ろうとした瞬ちゃんまで、氷河が床に落としたベッドカバーに足を取られて、ロシアのお友達の上に倒れ込み、そして。 倒れた瞬ちゃんの唇は、身体を起こしかけていたロシアのお友達のほっぺたにちゅう☆ 「★☆○△◎〜〜〜っっっ♪♪♪ !!!! 」 アゴが砕けそうなほどの痛みも忘れる、この幸運! ロシアのお友達はぽわ〜んとしながら瞬ちゃんを見詰め、瞬ちゃんはほっぺを真っ赤に染めて俯いてしまいました。 そこに。 「あっ、小人さん!」 「へ?」 そこにあったのは、どうやら朝寝坊の小人さんの7つめの彫刻でした。 なんと、7つめの彫刻は氷の国の氷河のベッドの中に隠されていたのです。 氷の国の氷河のベッド自体が、1トンの重しになっていたのでした。 |