次のコーナーは、小人さんたちのピアノ演叩会コーナーでした。

原寸大のピアノの上で機械仕掛けの小人さんたちがピアノを叩いている場面の再現と、『小人さん気分でピアノを叩いてみよう』のコーナーがあります。

ロシアのお友達と瞬ちゃんは、巨大ピアノを叩くためのハンマーを持って、『ぶんぶんぶん』を弾いてみようとしました。

ところが、あんまり夢中になりすぎた瞬ちゃんのハンマーが、ロシアのお友達の脳天を直撃。
ロシアのお友達は、じゃじゃじゃじゃーん★ と音を立てて、巨大ピアノの上に昏倒してしまいました。

それでも! それでも、小人さん彫刻を見つけだすロシアのお友達の執念!
これはもはや奇跡としか言いようがありません。

「氷河っ、大丈夫っ !? 」
自分のしてしまったことの重大さに狼狽しながら、ロシアのお友達の側にぺたんと座り込んでしまった瞬ちゃんに、ロシアのお友達は宙を指し示しました。

その先にあったのは、巨大グランドピアノのフタのつっかえ棒。
そこで、小人さんが一人、棒登りをして遊んでいたのです。
これは、案外死角になっていて、瞬ちゃんに叩かれてひっくり返らなかったら、小人さん彫刻探しの天才・ロシアのお友達でも、全然気付かずにいたかもしれませんでした。


「氷河って、ほんとにすごい……」
感嘆して、瞬ちゃんは呟きました。
これはもう、ロシアのお友達の怪我の具合いがどうこうという次元を超えていました。

そのセリフを、もっとオトナになってから、夜明けの寝室あたりで聞いてみたいと思うには、ロシアのお友達はまだまだコドモでしたが、でも、瞬ちゃんに褒めてもらえるのは、夜明けの寝室でなくても嬉しかったので、ロシアのお友達はちょっといい気分。

瞬ちゃんに褒められ、瞬ちゃんに喜んでもらい、瞬ちゃんの手に触れられ、瞬ちゃんに撫で撫でしてもらうと、身体のあちこちの痛みや脳天直撃のショックは、かえって麻薬のように、ロシアのお友達の気持ちをハイにするのでした。






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