「氷河くんは、このまま私がバスまで連れて行きましょう」
「よろしくお願いします」

「あの……」
瞬ちゃんが、ロシアのお友達のことをアルビオレ先生に頼んでいるマーマを、小さな声で呼びました。

「瞬ちゃん、帰りはクラスのみんなと一緒にお帰りなさいね。あら、なぁに?」
「これ、マーマにおみやげ」
崖から落ちても手離さなかったおみやげのお花を、瞬ちゃんはマーマに差し出しました。

瞬ちゃんからお花を受け取ったマーマは、やっぱりお花のように嬉しそうに微笑みました。
「ありがとう、瞬ちゃん! マーマ、とっても嬉しいわ。お家に帰ったら飾るわね。さあ、みんなが待ってるからお行きなさい」

「はい……!」
マーマに促されて、瞬ちゃんは、アルビオレ先生とロシアのお友達の後を追いかけて駆け出しました。

そして、でも、なんだか、さっきの声が気になって、ふと、そこに立ち止まったのです。

瞬ちゃんたちが落っこちた崖の端のところに、なんだかやけに落ち葉がもこもこ動いている場所がありました。
それがとっても気になったのですが、これ以上みんなを待たせるわけにはいきませんから、瞬ちゃんは、再び駆け出しました。


ロシアのお友達が守り抜いたリュックの中のおやつは、食べた記憶もないのに妙に減っていました。






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