その夜、ロシアのお友達の家では、瞬ちゃんとロシアのお友達がマーマと遠足のお話に花を咲かせることになりました。

「そうなの……。彫刻はあと1個だったのに、残念だったわねぇ」
「この次はきっと全部見つける」

「氷河は彫刻探しの名人だもんね。とっても頼りになるし」
瞬ちゃんに、愛と信頼に満ちた眼差しで見詰められたロシアのお友達は、すっかり照れ照れです。

そんな2人を、マーマも優しく(心の中でVサインを作りながら)見詰めていました。


でも、今日は、ロシアのお友達も瞬ちゃんも、あまり夜更かしはできません。
2人とも遠足でたくさん頑張りましたし、特にロシアのお友達は気力と体力を使い果たしましたからね。

「さぁ、2人とも疲れたでしょ。もうお休みなさい」
「はーい、おやすみなさい、マーマ」

ロシアのお友達と瞬ちゃんは、マーマに『おやすみなさい』を言って、ロシアのお友達のお部屋に行きました。

そして、ふたりしてパジャマに着替えて、ベッドに入ろうとした時――瞬ちゃんが脱いだお洋服のポケットから、何かが床に落ちたのです。

「あれ? これなんだろ?」
床から瞬ちゃんが拾いあげたそれは、先っちょに白いふさふさのついた小さな三角帽子でした。

「帽子だ」
「ちっちゃい帽子だね。まるで小人さんの帽子みたい」
「うん」
「一体どこで紛れ込んだんだろ……?」
「どっかのアトラクションに行った時じゃないかな」
「そうかもしれないね」
「うん」

2人はその小さな三角帽子を見詰め、それから、顔を見合わせて笑いました。


愛と波乱に満ちた、一生に一度しかない、小学2年生の(ロシアのお友達は3年生の)秋の遠足。
2人は一生、今日の日のことを忘れないでしょう。

小さな帽子は、その秋の遠足の大切な記念品です。
ロシアのお友達と瞬ちゃんは、その三角帽子を枕元に飾って、仲良く眠りにつきました。






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