氷河が掛けていた椅子から腰をあげた。 いつものように僕を呼ぶ。 「瞬、来い」 12時。 もう、そんな時刻。 星矢とバックギャモンに夢中になっていて、時間を忘れていた。 氷河の部屋に行かなきゃ。 その時刻なんだから。 「……星矢、続きは明日ね」 沈んだ口調で席から立ちあがった僕の顔を、星矢が眉をひそめて覗き込む。 ゲームのテーブルから少し離れたところにあるソファで雑誌を読んでいた紫龍も、不審げな目を僕に向けていた。 2人が何を訝っているのかはわかってる。 でも、その答えは僕の中にはない。 僕自身がわかっていないんだ。 嫌なのに――どうして氷河についていくのか。 嫌なのに、どうして氷河の声に逆らえないのか。 だけど、いずれにしても、それは事実だ。 僕は、氷河に呼ばれたら、氷河の許に行く。 行かずにいられない。 ひどいことをされるだけだとわかっていても、僕は氷河に逆らうことはできなかった。 |