「口は……おまえの方がうまいぞ」

「口説かれてばっかりだと、馬鹿になるからね」

いたずらっぽく微笑む瞬は、少し人間としての性を取り戻したように見えて、氷河はふいにその身体を抱きしめたい欲求にかられた。
しかし、月の光の魔法が、相変わらず透明なガラスのように、自分と瞬の間に立ちはだかっている――ような気がする。


だが、氷河は、怪我をするとわかっていても、月の光のガラスを割って、手を伸ばさずにはいられなかった。

氷河の手が触れた瞬の頬は、月の光のように白く、だが、春に咲く白い花の蕾のように温かかった。






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