僕は――多分、傲慢になっていた。

僕を氷河の自由にさせてやることで、少しでも氷河の病んだ心が癒されるのなら、人を殺すことを欲する苦しさの捌け口になるのなら、それでもいい――。

そんな気持ちになったのは、でも、氷河の手が僕を変えてしまってからのことだったかもしれない。

血に飢えた獣の手は、唇は、優しかった。
優しく僕の身体を変化させていった。


そして、氷河は、突然獣の姿に戻った。

荒々しく僕の中に押し入って来て、僕を泣き叫ばせて。


でも、これで少しでも氷河の気が済むのなら、僕に暴力を振るうことで、誰かを殺したい衝動が抑えられるのならと、僕は、彼の打ち込んでくる楔の熱さに耐えた。


僕は、犠牲的精神で、氷河を受け入れてやったんだ。


その夜から、何度も。


何度も。






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