「また来てね。一度見られたら、平気になっちゃった」

昨日と同じように、氷河と瞬は、庭先まで見送りに出てくれた。

「ああ、また来る」
車の窓を開けて、紫龍が、懐かしくてたまらないものに、再び別れの言葉を告げる。

「うん。絶対だよ」

氷河がそうであるように、瞬も幸せそうだった。

他人と違う自身の身体への不安はあるのだろう。
その外見のために、一人の大人として認めてもらえないことへの苛立ちもあるに違いない。
だが、氷河の横に、あの頃のままの姿で立っている瞬の瞳は、決して暗く沈んではいなかった。



今日も、冬場にしては暖かい陽射しが白い石の道で跳ねている。


紫龍が車の窓を閉じることなく車を発進させようとした、別れの間際。

「紫龍。そう言えば、貴様も幾度か死んでいなかったか?」

人の精気と瞬の愛情を糧にして生き延びている吸血鬼は、そう言って、謎をかけるような薄い微笑を紫龍に投げてきた。





Fin.







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