ソレントの命を、燃えさかる嫉妬の凍気から救ったのは、畏れ多くもアテナその人だった。
瞬がソレントのために小宇宙を使うのを、氷河が許さなかったのである。

「すみません。こんなことになるなんて……氷河はあとで叱っておきますから」
被害者でありながら、心ならずも加害者の立場に立つことになってしまった瞬が、何とか息を吹き返したソレントに、すまなそうに謝罪する。

「おまえも俺も悪くない。この男はおまえに狼藉を働こうとした」
生粋の加害者である氷河は、しかし、自分の罪(もしくは過失)を認めるつもりは、微塵もないようだった。

「だからって、氷河はやりすぎなの。僕の鉄壁の防御知ってるくせに」
瞬が氷河をたしなめる。
氷河は不満そうに、唇を引き結んだ。

意地を張った子供のような氷河のその態度に、瞬は肩をすくめてしまったのである。
「僕が、氷河じゃないと駄目なのは知ってるでしょ。それにソレントさんは――」

そうしてから、瞬は、絶対零度の凍気の中から、危機一髪で生き返ってきたばかりのソレントに、

「ソレントさんは悪い人じゃないけど、重いから」

にっこり笑って、華麗なとどめを刺してくれたのだった。






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